現地リポート|公益財団法人CIESF(シーセフ)は、教育をはじめとして、カンボジアなどの発展途上国を支援しています。

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教師としてスタートの地は? 2017.10.06 教師としてスタートの地は? カンボジアで小学校の教師になるには、州の教員養成校で2年間学ぶことになっています。
教員養成校は、英語ではTeacher Training CenterもしくはTeacher Training Collegeと訳されるように、“Training”つまり教師としての「研修を受ける」場所という認識です。
教員養成校に入学できた時点で準公務員扱いとなり、卒業と当時に公務員の教員免許を得て、州内の学校に教師として赴任します。
この制度もまもなく改正され、2018年からは教員養成校は順次4年制の教員養成大学へと移行していくことになります。
教育学部が存在しなかったカンボジアで、教師の重要性を中心に考えた、新しい教育改革がはじまります。

さて、従来の小学校教員養成校ですが、州ごとに全国に18校あります(カンボジアは全部で25州なので教員養成校のない州の学生は隣の州に通います)。
人々の生業が農業が中心である地方部の州では、地元で企業に勤務するという環境は、ほとんどありません。
教員養成校の学生の家族も、父母と兄や姉の職業が農業という構成が目立ちます。
地元で働いて家族を養うという目標を持つ若者たちにとっては、金額は決して多くはありませんが公務員として安定した収入が得られる教師は、最も魅力的な職業となります。
また、地方のカンボジアの若者たちは、インターネットの普及によってあらゆる情報をいち早くキャッチできるようになり、他の国の状況や国内の都市部と地方部の経済の格差、教育の格差を懸念し始めているようです。
教員養成校の学生に、なぜ教師を目指そうと思ったのかというインタビューを行ったところ、複数の学生から同じような回答が得られました。
中でも多かったのが、
「地元で働きながら家族を助けたいから」
「将来カンボジアを発展させるための人材育成ができる重要な役割をもった仕事だから」
「都会と同じレベルの教育を田舎の子どもたちにも与えられる教師になりたいから」
という回答でした。
「教師という仕事が好きだから」という自分自身の気持ちより、家族を助けたい、カンボジアのための人材育成をしたいという利他の、また高いレベルの目標が上回っているのが印象的でした。

教員養成校を卒業してすぐに教師としてのキャリアをスタートするわけですが、では、赴任地はどのように決まるでしょうか……。
実は、ここがシビアな世界なのです。
教員養成校では、2年生全員を対象に卒業試験を行い、その順位を発表します。
一方州の教育局では、新任の教師が必要な学校をピックアップして番号を付け、紙に書いた一覧表を作成します。

9月中に、各州の教員養成校では、「勤務地発表会」が開催され、そこで全卒業生の赴任先が決定されるのです。
まずステージ上に学校の一覧表が貼り出され、卒業試験の成績が1番だった学生から名前を呼ばれます。
名前を呼ばれた学生はステージに上がり、自分が希望する学校にマジックペンでチェックを付け、司会が学校名を読み上げます。
その一瞬で、赴任先が決まるのです。

学生のほとんどは、実家から通える地元の村の学校や母校を希望していますが、その希望が通るのも成績上位者のみ。
希望の学校がすでに選ばれてしまって、ステージ上でペンを持って茫然と立ち尽くす学生や、ステージから降りた途端に泣き出してしまう学生もいます。

実家から通えるかどうか、これはカンボジアの教師には大きな問題です。
教師の給料は、安定して毎月支払われるといっても、まだまだ独立して満足のいく生活ができるレベルのものではなく、家を借りて住むことは自分の家計を圧迫するだけでなく、家族への送金もほとんどできなくなってしまいます。
そういう事情もあってか、日本ではなかなか考えられない措置ですが、卒業生同士の同意があれば契約書にサインの上、赴任する学校を交換してもいいということになっています。

9月26日、シーセフが「国境なき教師団」のアドバイザーを派遣しているスバイリエン州小学校教員養成校の「勤務地発表会」に参加してきました。
ここでは4名の学生に赴任地決定後にインタビューをしましたが、成績が6位で希望通り地元の学校に赴任が決まった男子学生が、希望が通らなかった62位の男子学生と赴任する学校を交換という話をしていました。
その理由は、ほとんどの学生が希望をかなえられない中、自分は希望が通ってしまって申し訳ない気持ちと、通勤や下宿生活で苦労をした方が立派な先生になれるという気持ちがあるからとのことでした。

この学生の話を聞いたとき、間接的ではありますが、シーセフがカンボジアの教師を育成する事業に10年近く関われたことを誇りに思えました。
時間はかかるかもしれませんが、よりよい方向へ向かっていくであろうカンボジアの教師の人材育成に、シーセフはこれからも「国境なき教師団」事業などを通じて寄与してまいりたいと思います。


増子夕夏 大きな写真を見たい方はこちら »
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