
スバイリエン大学はベトナムと国境を接するスバイリエン州にある総合大学で、約3000人の学生が通っています。
同大学には、プノンペンまで行かなくでも大学で学んだことを活かして地元で就職し、家族を養いたいと考えている学生が多数います。
しかし、そもそも最貧州のひとつといわれるスバイリエンでは、地元で十分な給与をもらえる企業に就職するということが大勢の学生に開かれた道ではありません。
州都から東へ、ベトナム国境付近のバベット地区には複数の経済特区があり、日系企業が17社あります(2018年3月現在)。
そこでシーセフでは、日本語人材を求めているバベット地区の日系企業に就職するチャンスを学生が得ることができるよう、大学内に日本語コースを設置するプロジェクトを産業人材育成の一環としてはじめたのです。
2017年9月、第一期生として11名の学生が2年間の日本語コースを修了し、9名が就職、うち7名がバベット地区の日系企業に就職することができました。
2018年3月某日、就職してちょうど半年が過ぎたところで、卒業生の仕事の様子を視察に、バベット地区にある企業2社を訪問してきました。
スバイリエンの州都からバベット地区へは、トゥクトゥクだと1時間半ほどかかります。
今回は朝の5時半にスバイリエンの街を出発し、まずは1社目JAPANA TECHNICAL CENTER (CAMBODIA) CO., LTD.さんへ。
一期生2名(サラットさん、リカさん)が働いています。
サラット(男性)さんは、この半年間は研修の一環で靴を製造する工場の仕事全般を経験し、靴の形成を担当するグループを中心に働いています。
また、開発部門の補助業務も担当し、日本から来ている日本人に付いて、日本語を使ったコミュニケーションも行います。
「日本語コースでは、日本語の学習だけではなく“時間を守る”“身の回りを掃除する”という習慣も教わりました。そのことが今の仕事にとても役立っています」と話していました。
リカさん(女性)は、卒業と同時に結婚・出産を迎えたため、3月に入社したばかりです。
裁断のグループで、靴のパーツを作る仕事を先輩社員から教わっています。
「社員をとても大事にしてくれて、仕事も丁寧に教えてくれます」と楽しそうに答えてくれました。
同社代表の河口宏司さんにスバイリエン大学日本語コースからの学生採用について感想を聞きました。
「地元の学生を採用するという点を、重要に考えています。生まれ育った地域で仕事のスキルや日本語能力を身に着けて活躍し、将来は企業を支える現地スタッフになってもらいたいという思いで人材育成を行っています。」
日本人と比較するとひとつの会社に長く働くという習慣があまりないカンボジアにおいて、同社は短期的ではなく、長い目で見た人材育成を行っていました。
次にMURATA (CAMBODIA) CO., LTD.さんを訪問しました。
一期生のマニットさん(女性)1名が働いています。
同社はベトナムのホーチミンに工場を構える企業ですが、現在カンボジアのバベット地区にも新たに工場とオフィスを建設中です。
現在は、仮の事業所で縫製企業へと卸すプライスタグなどの在庫管理やオーダー生産をしています。
工場での実際の作業工程を覚えるため、マニットさんも時々ベトナムに出張しています。
マニットさんは、笑顔いっぱいに次のように話してくれました。
「今の私があるのは、スバイリエン大学の日本語コースで勉強したからです。日本語を勉強しなければ、日本の会社に就職することはできませんでした。新しい体験をたくさんさせていただいています。これからもっと仕事を覚えて活躍できる社員になりたいです。」
同社代表の山尾晃司さんは、マニットさんについて「日本語についてはかなり上手で、研修も終わり実際の仕事をしてもらっています。ビジネスマナーであったり、社会人になる上での基礎知識を大学生のうちに少しずつでも教えていただけると、就職してスムーズに仕事がしやすくなりますね。」と話してくださいました。
スバイリエン大学日本語コースが取り入れているビジネスマナーに関する研修を評価してくださっていました。
今回訪問できたのは2社だけですが、修了生たちは、昨年9月のにおくりだしたときより、日本語が上手になっていることに驚きました。
大学では、知識として学習した日本語かもしれませんが、就職して、実践の場で活かすことで上達をしたことがわかりました。
そこには彼らの努力があります。
「仕事をしながら日本語の勉強を続けていますか? 」という質問には、3人とも「はい」とはっきりとした返事をくれました。
3月後半から、二期生の日系企業でのインターンシップがスタートしています。
先輩たちが活躍している姿を見て、二期生も後に続いてほしいと願っています。
先輩を超えてがんばろう! というモチベーションになれば尚うれしいですね。
増子夕夏 大きな写真を見たい方はこちら »