シーセフが支援している教育政策大学院大学では、2020年に新たに博士課程を新設しました。
親切間もない博士課程の調査をするために、在学している学生にアンケートを実施しました。
後半は講義の科目の特徴と課題についてお伝えします。
前編の博士課程の現状についてはこちら)
講義科目の特徴と課題について
【有益な科目】
博士課程は2種類の専攻(教育政策専攻と教育リーダーシップ専攻)に分かれ、57単位の取得が求められている。博士課程は、授業科目履修と科目試験、論文執筆、論文口述試験、とプロセスが明確になっていますが、それをフルタイムで 3-6 年間、パートタイムで 3-8 年間で修了する
ことを予定しています。課程は 2 学期制を採用しており、第1学期(11 月~2 月)と第 2 学期(3 月
~7 月)で構成されています。
これは世界的な傾向ですが、教育政策大学院でも COVID-19 感染拡大の影響でオンラインの
授業が中心になっていました。初年度入学者(第1期生)はすべてオンライン形式であり、第2期生から徐々に対面講義が始まっています。「対面式が効果がある」という意見がある一方、通学に時間がかかる地方の人にとっては、「週末はオンラインで何とかなってきた。家族にも会える」とそのメリットを強調しています。今後、学生のおかれた状況や希望を把握したうえで、授業方式を検討していくことが望まれます。
【有益な科目】
博士課程には授業科目が 20 科目程度並んでいて、学生はそのなかから必修科目や選択科目を勘案しながら、選択していく仕組みになっています。
こうした科目のなかで、役立つと思う科目を尋ねると、圧倒的に「研究方法」科目に集中していました。博士課程では、「特に研究の仕方を教えてほしい。」「調査方法が一番大事。仕事に有益。」とみな同じ回答をしています。彼らの目標は、自立した研究活動のできる教育行政官であり、言い換えれば職場での担当部署で課題を発見したとき、自分で調査して問題解決を図ることができることを意味します。その際に、データをどのように収集し、得られたデータをどのように分析するのか、そしてどのような判断を下すのか、こうした活動に有益な知識・技術を身に着けたいということがわかりました。
調査関連の科目は2科目提供されていていて、「統計学を強化してほしい」というさらなる要望が出てくており、改善が最も求められています。
また授業は「クメール語で教えているが、もともとの用語は英語なので、かえってわかりに
くい。クメール語に訳さず、英語のままの方がいい」と専門用語のクメール語訳に改善を求める声もありました。
【設備】
博士課程の中心が研究活動にあるとすれば、特に重要になっている施設は図書館です。現在は、オンラインで多くの重要な資料にアクセスできるので、必ずしも建物自体は必要ないかもしれませんが、最新ジャーナル論文等の資料へのアクセスは研究活動にとって決定的に重要です。ところが、「資料が少ない。参考資料も少ない。図書館の資料がない。」という意見がありました。また、現状では 「調査資料が大変。インターネットで資料を見つけるが、調べるときにお金がか
かる。」「ウェブの資料は有料。無料になってほしい。」という発言にあるように、個人負担では限界であることがわかります。また社会科学系の統計ソフトに SPSS があるが、それは調査には不可欠のツールと言え、そのソフトを機関としての購入を希望する意見もみられ、こうした点の改善が強く求められています。
今回のインタビューの結果を受け、シーセフとしてどのような支援ができるのか検討するとともに、今後、教育政策大学院の専任教員にもインタビューし、博士課程の全体のビジョンや各科目の内容について確認していく予定です。