教育アドバイザーの活動日誌|公益財団法人CIESF(シーセフ)は、教育をはじめとして、カンボジアなどの発展途上国を支援しています。

教育アドバイザーの
活動日誌

教育アドバイザーの活動日誌
小学校教員養成校での算数・数学教育の一端③ 2012.03.13 小学校教員養成校での算数・数学教育の一端③ 前回につづいて、カンボジアでの活動を通して、カンボジアの教育環境や教員養成校の実情などいろいろ感じることを、今回はも算数・数学の分野で、日本との違いや、彼らの抱えている課題の幾つかを紹介する。

(①~⑨は、3月8日の活動日誌に掲載)

⑩言語からくる違い。
・分数では、分子を先に読んでから分母を読む。
・縦=短い辺、横=長い辺のことなので、縦長の長方形では、日本の縦が「横」にあたるが、そのことを知らない頃は、通訳との間で少々混乱があった。
・文字記号の読み方がフランス語なので、x、yは「エッ」「イグレ(ク)」のように聞こえてとても分かりづらく、思わず「エッ?」と聞いてしまう。
・日本語の用語がクメール語にないとか、その逆もあって、我々も通訳も困ることがある。
・クメール語にはお坊さん用語(と通訳は言っている)があり、それが算数・数学や教育全般にもたくさんあって、彼らがクメール語そのものを理解できないこともある。
*いろいろな場面で、言語の違いや問題なども考慮する必要があるようだ。

⑪数学の記号表記の違いは、角度、合同、相似、両辺の関係・・・といろいろあり、こちらには分かりづらいが、逆にこちらが指導する場合も気をつけないといけない点である。

⑫1より小さい目盛の数直線や升目の計測が苦手な学生が結構いるのは、経験の乏しさによるものと思われる。


⑬図形の課題。
・角錐の頂点が1つだと勘違いしている学生が結構いるのは、頂点の定義よりも言葉から受けるイメージの影響の方が大きいからのようだ。
・図形で、少し形や位置が違うと迷ってしまう学生が結構いる。
・縮小図を基に作図を指示すると、やはり縮小図の大きさのままで描く学生が結構いる。
*図形に関しては、平面、立体ともに苦手とする学生が多い。
先生の中にも良くできる人と苦手だったり図がうまく描けなかったりする人がいる。
実物に触れたり、それを観察したり、自分たちで展開図を描いて作ってみたりする経験が乏しいことが原因と思われる。

⑭証明したり、別の方法はないかと考えたりする学習があまり行われていない。
ただ公式を丸暗記し、その方法でのみ問題を解こうとするので、ちょっとでも問題や図形の形が変わるともうお手上げの学生も結構いる。
先生の説明や板書もそのとおりにノートをとり、問題を解く場合も教えられたとおりにやり、それ以外の場合は正解でないと考える傾向も一部に見られる。
そう言えば、宿題を出したら全員同じ解答になっていたという話も聞いた。

⑮不等式の範囲の図による表示法の違い(中学校教員養成校での話)
中学校教員養成校のアドバイザーの話では、0<x<3を左の図のように示すようだ。

カンボジアと日本の違いだけのものについては、その内容や方法を尊重し、こちらも積極的に理解できるようにすればよい。
カンボジアの抱える課題については、彼らの能力の問題ではなく(彼らは熱心であり、真面目であり、優秀である)、経験の乏しさ、誤った認識、クメール語での適切な情報の不足などがある。
算数・数学に関して言えば、ドリルによる繰り返し練習がかなり少なかったり、適切な教材教具がすぐ手に入りにくかったりすることもある。
またいろいろ挙げた項目は、自分の勝手な判断という部分もあり、必ずしも正確な情報ではないし、当然すべてを網羅している訳でもない。
必ずしも日本の方がいつも優れている訳でもないことも理解しておく必要がある。
その上で、カンボジアの算数・数学教育の理解の一助にしてもらえれば幸いである。

1年だけの滞在、と思っていたのがいつしか1年半になり、今度は2年のつもりが、妻の希望でまた少し伸びそうである。
CIESFカンボジア事務所の松倉さんもやさしい笑顔で長くいてほしいと言ってくるので、その手に弱い小生はついぐらりと来る。
こんないい加減な者でも楽しくやっているが、是非長年小中での算数・数学指導に当たられた経験豊富な先生方の協力をお願いしたい。
その時は喜んでバトンタッチしますよ。

勿論「あなたなら十分できます!!」


筧八郎
教育アドバイザー
プノンペン小学校教員養成校
算数担当


写真 三角形の合同や角度についての証明(一部)の板書例。記号の使い方に注目! 大きな写真を見たい方はこちら »
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