
2018年11月5日(月)からコンポントム教員養成校でお世話になっています。
理科・算数の教育アドバイザーとしてコンポントム教員養成校で活動させてもらっています。
1年生は5月21日(火)から6月29日(土)まで約2ヶ月、小学校の現場で実習を行います。
教育実習です。
2年生は2回の教育実習を経て、7月4日(木)、5日(金)に卒業試験を受けます。
その後、カンボジア各地の小学校に赴任していきます。
私自身は教育実習の経験がありません。
若い頃、転職して教師になったからです。
だから、神戸の小学校現場で先輩の教師から学びました。
また、子どもたちからも学びました。
現場で教師として育ててもらいました。
そのおかげで、幸い定年までの 35 年間なんとか無事に先生として過ごさせてもらうことができました。
当初、子どもたちのおしゃべりやふざけに対してどうしたらよいかわかりませんでした。
子どもたちの声に負けまいと大声をだしました。
声を枯らしたこともありました。
毎日が疲労困憊の連続でした。
子どもは正直です。
つまらない授業、退屈な授業、分からない授業などに対して表情や態度で訴えてきます。
そのたびに、先生としてのプライドが傷ついていったと思います。
そのため、子どもが自分の思うように動かないことに対して、私はより一層、子どもを怒りました。
先生としての威厳を保とうとしたと思います。
私から笑顔がなくなり、怒りの表情で毎日、子どもと向き合うことになりました。
上から目線しか子どもをみつめることができません。
いや、子どもはおしゃべりやふざけで未熟な教師である私を拒否していたのかもしれません。
自分が未熟だとは思ってもみませんでした。
だから、子どもたちはおしゃべりやふざけで、私の先生としての未熟さに気付くようにしてくれたのです。
しかし、カンボジアは仏教国です。
お父さん、お母さん、兄弟姉妹をとても大切にします。
特に先生を尊敬します。
だから、教員養成校の学生たちは私のような教師人生のスタートにはならないと思っています。
今、教員養成校では、IBL(Inquiry Based Lesson:探求型授業)を学びます。
一方的に知識を伝える教師中心の授業から子どもという学習者中心の授業へと変革が求められているからです。
その理由は「教師の上から目線の授業」から「子どもと共に作る授業」へと教師の意識を変革することにあると思っています。
しかし、私が痛感したように、子どもは教師の都合のよいようには動いてくれません。
「子どもというのは教師の思うとおりに動かないものだ」、「自分の未熟さ」、これらのことに気付くことが教育実習の最大の成果かもしれません。
カンボジアの子どもたちは素直です。先生の言うことをよく聞きます。
それだけに、このことに気付きにくいかもしれません。
また、養成校に入学してくる学生は勉強がよくできます。
勉強がよくできる先生は「どうしてこんな簡単なことができないのか」とできない子の気持ちがわかりにくい傾向にあります。
どうか子どもの心に寄り添うように努力してください。
子どもたちに学ぶ楽しさを伝えてやってください。
分かる喜びを子どもたちに実感させてやってください。
「教育実習、がんばれよ」と学生にエールをおくります。
国は違うが、先生として私は皆さんの先輩です。
教育実習で「子どもというのは…」「自分の未熟さ」に子どもから気付かせてもらいなさい。
私のアドバイスと願いを込めたしおりです。
2年生から始まったしおり。
首からぶら下がったしおり。
今では 1 年生も、お守りのように首からぶら下げています。
胸元でひらめいています。
カンボジアの未来を担う先生の卵に送ります。
先輩から後輩におくるエールのしおりです。
高杉昌明
教育アドバイザー
コンポントム小学校教員養成校
理科・算数担当 大きな写真を見たい方はこちら »