
日々、日本との違いに戸惑いながら、カウンターパートの先生3人と授業づくりに取り組んでいます。
「てこ」学習では、教科書に「実際にはできない実験」が紹介されています。
三角形の支点に長い板をシーソーのように乗せて、支点の位置をずらして釣り合うときのおもりの数や支点からの距離を調べるのです。
何度試しても釣り合わせることはできません。
私は日本の学校のように、長い棒を用意し、体感を伴った学習にしようと考えました。
カウンターパートの理科教官のカッシャー先生に話すと、自宅から丈夫な竹の棒を6本切ってきてくれました。
支点にはレンガ、おもりにも袋に詰めたレンガを使いました。
学生はすでに支点の位置によって必要とする力が変わることを知っていましたが、実際に実験して、その違いを実感していました。
この学習は、この後「てこ」を利用した道具について学習して終わります。
「なぜ支点から作用点までの距離が短くなると、小さい力で物を動かすことができるのか」ということは中学校3年で扱うことになっています。
日本では6年生で学習していますから、先生になる人たちには分かっていてほしいと思いました。
しかも、この養成校にはロータリークラブから寄贈された「てこ実験器」が3台あります。
そこで「てこの原理」も指導してくれるようカウンターパートの先生にお願いしました。
1回目の授業では、てこ実験器の片方のおもりの位置を変え、釣り合う重さを調べました。中学校で学習済みのはずなのですが、学生はきまりに気がつきません。
大急ぎで黒板に表を書いて説明しました。
すると、すぐに「距離×重さ」が釣り合うことに気がつきました。
2回目の授業では、はじめから表をかき、カッシャー先生が1人で説明しましたが、この時も時間がかかりました。
たぶん「てこ実験器」のような道具を使ったことがないこと、実際に実験をともなった学習をしていないことが原因なのでしょう。
カンボジアの学校には、実験道具はありません。
カッシャー先生は8年間、中学校と高校で理科を教えてきましたが、授業で実験をしたことがないそうです。
でも学生たちが教師になったとき、ここでの体験をもとに、楽しく、分かる授業作りをしてほしいと願っています。
齋藤悦子
教育アドバイザー
スバイリエン州小学校教員養成校
理科担当
写真 「てこ」の実験 大きな写真を見たい方はこちら »