
昨年の「地球の回転」の授業の時でした。
教官(カンボジア人教師)は、「地球の自転により昼と夜が生まれる」ことを学生に対して地球儀と懐中電灯を使って確認させました。
しかし「公転」については、「公転によって季節が生まれる」と述べるだけで、詳しい説明もせずに授業が終わってしまいました。
授業後、地軸が傾いているため太陽の光の当たり方が変わることなど、地球儀で確かめながら話しましたが、翌日の授業でもやはり説明できませんでした。
その後、「気候」の単元で、また「雨季と乾季が生まれる理由」を学習するチャンスが来ました。
どうするだろうかと見ていると、突然私に説明するよう依頼してきました。
そして、私の説明が終わると、教官自ら「先生も初めて知りました」と言いだしたのです。
「もしかしたら」と想像はしていましたが、やはり驚きでした。
カンボジアでは、先生が質問し、学生が教科書に書かれていることを答えて、その学習が終わるのが一般的な授業です。
教材がないので、実験で確かめることはせず、暗記中心の学習です。
小学校4年生から何度も「地球の公転」の学習をしているにもかかわらず、一度も詳しい説明を聞いていないのです。
しかも地球のことは試験に出ないので、自分で詳しく勉強することもないのだとか。
私の簡単な説明だけでは、理解できなかったのもうなづけます。
今年度は、3人の教官が2学年、各1クラスずつ理科を担当しています。
そこで、月に2回ほど、授業内容中心に研修会を開いています。
「公転による季節の変化」についても行いました。
まず、「日の出の位置が違う4枚の写真」を見せ、なぜ日の出の位置が違うのか問いかけました。
そして、下記の内容を地球儀や転球儀を使いていねいに説明しました。
・太陽の通る場所が時期によって違うこと
・地軸が23.4度傾いて公転しているため、6月と12月では太陽の光の当たり方が違うこと
・「乾季は乾いた北東の風」「雨季は湿り気の多い南西の風」が吹くこと
さらに、アンコールワットは、春分の日と秋分の日に塔の中央から朝日が昇るように作られていることも写真で伝えました。
12世紀の頃すでに、太陽の通り道が規則的に変わることを知っていた、偉大な祖先を持っていることに対して、誇りを持ってほしいと思ったのです。
今年も「地球の回転」の学習を行いました。
今度は理解してもらえたかなと思っていましたが、ベテランの教官が授業の直前に「もう一度説明してほしい」と私に言ってきました。
もちろん、もう一度説明しましたが、授業では、結局私に説明を委ねてしまいました。
学生に話す自信が持てなかったようです。
しかし、他の2人の教官は、自力で説明することができました。
「気候」の単元で、また「季節の変化」を学習しました。
教官が「なぜ雨季と乾季が生まれるのか」と当と、2人の学生が手を上げて「太陽の当たり方が変わり」「風の向きも変わること」など説明しました。
「地球の回転」の学習が、確かに生きていました。
学生も先生も着実に変化していることを感じ取ることができて、うれしい日でした。
齋藤悦子
教育アドバイザー
スバイリエン小学校教員養成校
理科担当
写真:季節が生まれる原因を説明するTola先生 大きな写真を見たい方はこちら »