
新しい教材に関心を持っている先生で、話す機会があると「何かないか」とよく聞いて来ます。
先日、プレイベンに行った折に「物質の化学的変化」の教材開発として、カー先生に頼み、VTRを撮らせてもらうことにしました。
撮影の内容は、1)「鉄(スチールウール)を空気中で焼くと別な物質になること」と2)澱粉が大根汁(唾液の代用)で澱粉ではない物質に変化する」ことの2つです。
ご存知所通り、鉄(スチールウール)を空気中で焼くと酸化鉄(2Fe+O2→2FeO)になります。
いわゆる黒錆といわれている物です。
酸化(錆びる)前の鉄と酸化後の鉄は物質が異なりますので、酸化前には電気を通していた鉄も、酸化鉄は電気を通さなくなってしまいます。
これは、とても簡単な実験で、時間もかからず、結果もはっきり目に見えるため、カンボジアでは好まれると考えました。
澱粉が大根汁(唾液の代用)で他の物質に変わる実験は、時間は多少かかるけれど、体の中で起こる変化なので私としては紹介しておきたいとの思いがありました。
以下は、1)の鉄(スチールウール)を空気中で焼く(酸化)の実験の撮影に当って、それにまつわるやり取りを切り取った報告です。
さて、いよいよ撮影当日。約束の時刻より早く見えられた先生から、撮影に入る前にリハーサルを行いたいとの申し出がありました。
もっともなことでリハーサルを行った(スチールウールを焼く前は乾電池につなぐと豆電球が点くけれど、よく焼いた後は豆電球が点かなくなるという実験)わけですが、終わったところで、ふと何かを思いつかれたようでした。
「これ(鉄-スチールウール)でなくも、他の物質ならどうなる?」と。
その疑問を私に投げると同時に、豆電球のソケットの一方の端の絶縁部分を剥き始めました。
そして、長くなった導線部分(銅線)の先の方を焼き始めたのです。
十分に焼いた後に、直接乾電池に接触させました。
鉄(スチールウール)を焼き、挟んだ時と同様に豆電球は点きませんでした。
何度か繰り返して間違いなく点かないことを確認した後に、今度は焼かなかった導線の根元の部分を乾電池に直接接触させてみていました。
この時点で先生としては豆電球が必ず点くという確信があったわけではないように思えましたが、確かめの結果は、豆電球が点きました。
そして、焼いた部分、焼かない部分を交互に繰り返し接触させ、より深い理解にいたったようでした。
振り返ってみると、VTRを撮るという活動の中で、私にとってとても大切な発見がありました。
カー先生はふと思いつかれたことを実験に移し、確かめ、自己解決を図られたわけですが、「ここを変えたらどうなるだろう。同じことが言えるのか」という理科で大切にしている探求の仕方、一つのことから問題を広げていくやり方がそこにはあったということです。
素晴らしい!!
石澤博通
教育アドバイザー
プノンペン/プレイベン小学校教員養成校
理科担当 大きな写真を見たい方はこちら »