
プノンペンから西へバスで6時間ほどの所にコッコン州はある。
コッコン州内はアクセスが悪いことで知られている。
幹線道路から一歩奥へ入ると木が生い茂り、手付かずの自然と野生動植物の宝庫となっている。
こんな辺地であるが豊かな自然に魅せられて暮らす人も多い。
プノンペン教員養成校の教官有志たちは、点在する小学校の支援活動を行っている。
プノンペン教員養成校から毎年多数の卒業生をこの地へ輩出してきた。
今回、有志に同行しいくつかの小学校を訪問し支援の様子を見ることができた。
訪れた学校は広場に建ち、屋根はトタン板、壁は板を打ち付けただけの粗末な作りでまるで掘立小屋であった。部屋は一部屋だけで、板の隙間から風が入り、日も差してくる。
今時これが学び舎かと思うと涙が出る。
これらの学校では、全児童50人を3グループに分け1人だけの先生で教えている。
子供の中には素足の子が何人かおり、教科書は全体にいき届かず、鉛筆、ノートなどの基本的な文房具さえない子もいる。
学校には学習指導するための補助教材はほとんどない。
どの子も容姿から痩せて小柄、幼さを残していることから栄養が足りてないように見えた。
ここでは水道の代わりに雨水、電気の代わりにバイクのバッテリーが使用され、トイレは外で用を済ませる。
バイクは街への買い物の必需品で、バイクの貸し借り、荷物運搬を頼んだり頼まれたり、お互いが助け合い生活している。
子供たちは穏やかで仲良く明るい。
この村人全員で子供たちを育てているのか、それともカンボジアンの気質からきているのだろうか。
今回の訪問では基本的な文房具用品を袋詰めにし、栄養のあるお菓子を持参し子供各々に配布した。
また、学習に役立つよう学校教師には、理数科教官で作った「方位磁針」「肺のつくり」「位取り表」等の自作道具も持参し使い方の説明会を開き使用説明をした。
教官有志たちのもう一つの目的は、卒業生の成長ぶりを見ることだ。
昼食や夕食時には、かつての教え子たちが恩師を囲み、養成校時代に過ごした寮生活のこと、友達や恩師のこと等、懐かしい思い出話や教育談議に花が咲く。
教え子たちの顔つきや話しぶりから逞しさを感じ、既に学校の中核として活躍しているようだ。
プノンペン教員養成校の教官たちが熱い気持ちをもって支援するカンボジア人の真の心意気を知った。
この支援から巣立った子供がやがて教師としてこの地へて戻り、後輩たちを育て国づくりの礎となるよう導いていく姿が目に浮かぶ。
佐藤厚一
教育アドバイザー
スバイリエン小学校教員養成校
理科担当