川を渡る人々

2010年7月 1日

No.1.jpg「川を渡る」ことをクメール語で「チュローン トンレー」という。
「出産する」こともクメール語で「チュローン トンレー」という。

その昔、カンボジア人にとって川を渡るということは、出産するほど大変なことであった。
現在のカンボジアでも、川を渡るというのは大変なことに変わりない。


今でこそ大河メコン川にはいくつかの橋が架かっている。
外国からの援助を受けて建設された橋の中には、日本の橋も存在する。
日本が支援した代表的な橋の一つに、カンボジアの500リエル紙幣にも印刷されているコンポンチャム州のキズナ橋(写真2)がある。
No.2.jpg現在、カンボジア国内では、韓国や中国も橋の建設支援に力を入れてきている。
それでも大河メコンを渡る橋の数は極めて少ない。
とくに農村部など貧困層が暮らす地域には、メコン川を渡る橋は建設されていない。
また、カンボジアにはメコン川の支流のトンレーサップ川やバサック川など大型の河川が存在する。
そうした川には橋が架けられておらず、人々は向こう岸に行くのに大変な苦労をしている。
川を渡るには船に乗らなければならず、乗車賃が必要となる。
現金収入が少ない農村部の人たちにとっては、簡単に向こう岸に行けるわけではないのだ。


船といっても、大小さまざまな船がある。
有名なのはプノンペンからベトナムに抜ける国道1号線上にあるネアック・ルーンフェリー(写真3)だ。
ベトナムからプノンペンへ抜ける唯一の陸上運送路であり、車の往来も多い。
多いときには車が20台程度乗船することができる。
また二つの小船の上にボロボロの筏を載せて、エンジンを付けただけの渡し舟(写真1)もある。
この船に車を載せることがあるから驚きだ。
積載オーバーなのか、船の寿命なのか、沈没してしまう船の話も聞く。


No.3.jpg水資源の豊富なカンボジアでは、今日も大小さまざまな船が人や物を乗せて川を渡っている。
川の向こう岸に行くということは本当に大変なことである。
いつか橋が架かる頃には、人々の暮らしも様変わりするようになるのだろうか。
人々の暮らしが良くなり産業が育つのを待たなければ、向こう岸へと繋ぐ橋は架からないのかもしれない。

松倉洋海

カテゴリ: