モスクのある風景
2010年6月 7日
カンボジアは仏教国であり、いたる場所でお寺を中心にした村作りを行っている。
メコンデルタ地帯の平坦な大地の中に、高床式の住居が中心となった集落ばかりの風景は慣れてくると退屈でしかない。
そんないくつかの集落を車で追い越していくと、突然大きなモスクが現れることがある。
カンボジアには「チャム族」と呼ばれるイスラム教を信仰する人々が点在している。
その数、20万とも30万人ともいわれているカンボジア最大の少数民族だ。
彼らは「クメール・イスラム」とも呼ばれ、2世紀~17世紀にかけてベトナム中部で海洋貿易国家として栄えたチャンパ王国を築いた民族の末裔である。
度かさなる戦乱から逃れ、国を持たない民族として、東南アジアを中心に散らばっていき、独自の文化を守っている。
子どもたちはチャム族の学校に通い、イスラム教の戒律とチャム語を学び、育てられる。
頭に白い帽子をかぶった人たちや、頭に布を巻いた外見から、クメール人たちと比べても容易に区別がつく。
チャム族は、コンポンスプー州、ラタナキリ州、モンドルキリ州を除いたカンボジア全土に、モスクを中心に独自の村を作って暮している。
とくに、メコン川沿いやトンレサップ湖周辺で、漁業を中心に、農業やバイクタクシーなど比較的に仕事に就きやすい職業で生活している。
カンボジア人社会は、会社やお店などの商売をする時に、一族経営が基本。
独自の文化を持つチャム族を雇うことは考えられない。
閉鎖的な考え方が一般的なカンボジア社会では、まだチャム族が不自由なく生活出来る環境や地位は確立できていない。
そのため、誰でも始められる、賃金の少ない職業にしか就けないのが現状だ。
ポルポト時代にモスクの多くは破壊され、戒律で禁じられている豚肉を食べることを強要された時代もあった。
モスクの再建資金は、難民として国外に暮らすチャム人や、イスラム諸国からも寄せられているそうだが、大部分はカンボジアに住むチャム人の喜捨により建設されている。
そのモスクは、数こそカンボジア国内に点在しているに過ぎないが、外観はかなり豪華な造りのものも多い。
独自の文化を守りながら、彼らは何度も訪れる苦境を乗り越えてきた。
それは、カンボジア人社会を前にしても、これから先も変わらないのかもしれない。
苦難の時代を乗り越えて、自分たちで少しずつ、静かに力をつけようとしている。
松倉洋海









