向こう岸の人々

2010年5月24日

向こう岸の人々.jpgプノンペン中心部から東側には、王宮をはじめ様々な官庁やレストランが建ち、その華やかな街並みは、プノンペンの豊かさを感じるに十分な場所である。

その先には、大河メコンが雄大に流れ、プノンペン中心部を南北で挟むように巨大な橋が架かっている。
近年は、メコン川を渡った向こう岸にも開発の波が訪れ、建設ラッシュが進み、見違えるほど、整備されてきている。


太古の昔から、人々は川を中心に生活し、街を築いてきた。
時代は変わり、川に求めるものが違ってきても、今も人々は川沿いに集まってくる。
以前は、プノンペン市内の川沿いにも、バサックスラムと呼ばれる大きなスラム街が形成されていた。
政府の所有するその土地は、地価の高騰と共に、民間企業へと売却され、スラム住民の立ち退き問題が起きた。
ここに住む住民たちの立ち退き先は、市内から十数キロ離れた土地だった。
この場所にスラムが形成された理由は、仕事に就きやすいことだ。
離れたところに移動しても、生活できずに戻ってきてしまう。


そんなイタチごっこの中、スラムを襲う原因不明の火事が起きた。
今ではスラムがそこにあったことを想像することが出来ないぐらい建設工事が行われている。
いつだって弱者は弱者でしかなく、流れに身を任さざるを得ない。


プノンペン中心部寄りの川沿いには、ネオンの光があふれ、幻想的な風景をメコン川に映し出している。
しかし、向こう岸にあるスラムのようなトタン屋根の家の群れは、急激に発展する街とは対照的に申し訳程度に川沿いに広がっている。
雨季がくれば、高床式の家の床下数センチまで、大河メコンが増水する。
彼らの家の後ろでは、ものすごいスピードで、変貌を遂げようとしている高層の建物が建設中である。
川を挟んだこの景色を見ると、彼らが追い出されるのは、そう遠くない近い将来だと、感じてならない。


彼らは何を想い、何を感じながら、向こう岸の急激な発展を遂げた景色を眺め、自分たちの家の後ろに広がる開発の波を聞いているのだろうか。
発展していく街並みの光と影は、急激なスピードで明暗の境をくっきりと浮き彫りにしてきている。


松倉洋海

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