【教育アドバイザーの活動日誌⑧】1年を振り返って(その4)通訳

2010年8月 6日

その4-1.jpg通訳というと、要人などの後ろに影のように付き添い、相手の言うことを耳元で即座に伝える、というテレビのニュースなどのシーンを思い浮かべる。

通訳というと、要人などの後ろに影のように付き添い、相手の言うことを耳元で即座に伝える、というテレビのニュースなどのシーンを思い浮かべる。
いわゆる黒子であり、決して表舞台には立たない。
話している当事者たちは、お互いに相手を見て喋り、通訳の方に向かってはしゃべらない。


CIESFの教員募集要項には、語学に関しては特に条件がなく、教育アドバイザー一人に一人通訳を付けてくれるが、その通訳は、先の通訳のイメージとは異なる。
しかし、それでも通訳がいないとなるとたちどころに困る。


準備室に現地の先生が、「この実験をやりたいが……」などと言ってきても、まったく何を言っているのかわからず、こんな時には通訳のありがたさを感じる。
通訳を、買い物などの日常生活でのサポーターとして使う分には、手足となってくれるし、またCIESFもとりあえずは日常生活に不便がないようにと通訳をつけてくれているのだと心得た方がいい。


授業などで、授業内容を即座に通訳してもらえるかというと、かなり無理がある。
先生が何を言っているのかを訊いても、日本語になっていないことが多く、また耳がそれほど良くないこともあってか、私には大変聞き取りにくい。
彼らは文系の人間であり、今までに化学など学習してこなかったのであるから、自分が聞いたこともない化学の専門用語を訳せといっても、所詮無理なのであり、授業などの訳を頼むことは、ほとんどどあきらめている。
したがって、授業での教師の教え方など、細かなことを知ることはできないから、「教員への教え方の指導」などは、とても無理だと感じている。


通訳には、中学校の理科の教科書の、化学の分野を和訳してもらっているが、この訳がまた日本語になっておらず、並べられている単語を再構築して日本語に翻訳し直さなければならない。
私がワープロで打ち直し、通訳に戻している。
また、勝手に開いている「実験化学講座」のクメール語への通訳をしてもらっている。
講座の4-5日前に授業内容を書いたプリントを渡し、クメール語への翻訳をお願いし、講座内容を事前に勉強してもらう。


私についてくれている通訳は頭もよく、非常に勉強家であるからわからないところは私に質問するなどして、事前に授業内容を理解してから、授業に臨んでくれる。
しかし困ったことに、勉強しているがゆえであろうが、生徒からの質問に自分で答えてしまい、私はつんぼ桟敷に置かれ、生徒の質問内容がわからず、したがって、生徒のつまずきがわからない。
通訳とは通訳であるから、自分で答えず、質問を訳すようにと再三言うのであるが、なかなか直らない。

   
こんなやり取りをしながら、通訳はだんだんと理科の内容を理解したり、通訳とはいかにあるべきかを学び、徐々にスキルアップしていくことになるのだろう。
給料が安いと嘆いている(高くはないが、安いわけではない。RTTCの先生よりは高い給料をもらっているらしい)彼らは、ようやく使い物になるころには、CIESFを離れ、どこか、より給料の高い職場に再就職してしまうのだろう。


しかし、こうして通訳を育てることも、長い目で見ればカンボジアの復興に一役買っており、CIESFの仕事の一つであろうとの思いで、気長に見守っていこうと思っている。

 

溝口克彦
教育アドバイザー
プノンペン中学校教員養成校 化学担当

 

写真:私についてくれている勉強家の通訳

 

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