ポルポト政権によって一度は「教育制度」が廃止され、そして教師をはじめあらゆる知識層が殺されてしまったカンボジア。ポルポト政権の崩壊後、なんとか字を読める人が教師となり、この国の教育を支えてきましたが、未だに多くの教育問題が未解決のまま残されています。
1.就学率について
カンボジアでは日本と同様に六・三・三制がとられています。就学率は小学校では90%を超えますが、卒業できるのはそのうちの半分です。カンボジアでは退学率、留年率が非常に高く、その理由は「家庭が貧しい」「働かなければならない」「学校までの距離が遠い」など多くの場合が貧困によるものです。またカンボジア、中学校→高校→大学と学年が上がるごとに就学率が極端に低下する傾向にあり、都市部と地方を比べても歴然とした差が見受けられます。
2.教師の質について
学校にいっても、そこにしっかりと教えてくれる先生がいなければ意味がありません。現在、6割以上が中学校を卒業した時点で教師になっていることからもわかるように、教師のレベルはあまり高くありません。彼らの中には分度器やコンパスを使ったことのない算数の先生や、教科書でしか理科の実験を見たことがない理科の先生がいるのです。彼らが学生の時もまた、しっかりと教えてくれる先生がいなかったのですから、仕方のないことかもしれません。
またこの国では、教師の社会的地位が低く、カンボジアで一ヶ月生活するには300ドル必要なのにも関わらず、ほとんどの教師が月50ドルの薄給で生活しているといいます。同じ公務員でも政府の高官が裕福な生活をする一方で、現場の教師は日々の生活を守るために副業をしなければなりません。学校をいくつも掛け持ちしたり、タクシーのドライバーをして日銭を稼ぎつつ授業をしているのです。このような現状を知っているために、教師になりたいと考える学生は少なく、中には他に仕事がないから仕方なく教師になる学生もいるようです。
3.教科書等教材の問題
カンボジアでは主に、外国で作られた教科書がそのままクメール語に翻訳されて使われています。翻訳者が教科書の内容を理解しておらず、意味を間違えて訳してしまったり、そもそも教科書の内容がカンボジアに即していないことも多いようです。またカンボジアには十分な資料集や、実験器具が揃っていません。教科書に掲載されているのは知っているけれども、実際には見たことも触ったこともないという現象がカンボジアの学生のあいだで起こっているのです。
4.ハードの問題
現在、カンボジアの約半数の小中学校で三部制がとられています。三部制とは、朝・昼・夜に分けて一つの教室で授業をすることです。教室の数が足りないのでこのような対策が取られています。また建物の老朽化が進み、教室で勉強する児童に危険を及していることも問題視されています。一方でカンボジアの人たちの意識がハードという「外見」ばかりに偏りすぎてしまい、肝心なソフト「中身」をおろそかにしてしまっているという逆説的な問題もあります。
このように経済、政治、文化と様々な問題が絡み合っているカンボジアの教育問題。 ただ物資を提供するだけでは解決することはできません。今のカンボジアには問題の本質にアプローチした解決策が求められています。
※掲載のデータは、Ministry of Education, Youth and Sport (MoEYS) (2005, 2007)、および「カンボジアにおける初等教育の現状と課題」早稲田大学大学院教育学研究科紀要別冊15号-1 2007年9月(平山雄大)等を参考にしています。
| カンボジアの教育体制 | 純就学率 |
|---|---|
| 就学前教育(1-3年間) | |
| 初等教育(6年間) | 93% (但し、卒業できるのは52%) |
| 中等教育(3年間) | 34% |
| 高等教育(3年間) | 15% |
| 大学教育(4-7年間) | 5%(推定) |
| 職業専門学校 |

| 15年の教育データ比較 | 1993 | 2008 |
|---|---|---|
| 1.学校数 | 4,539 | 6,476 |
| 2.クラス数 | 35,025 | 60,384 |
| 3.教室数 | 40,389 | |
| 4.生徒数 | 1,468,958 | 2,311,107 |
| 5.教員数 | 42,405 | 46,921 |
| 6.教員一人あたり生徒数 | 34,6 | 49,2 |











